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ホアキン・アチューカロ 31 ルシアーノ・ゴンザレス・サルミエントが著した素晴らしい伝記(原注参照)を読むと、 ショパンは貴方が幼い頃から慣れ親しんできた作曲家であるだけでなく、貴方の音楽 家としての適性を大いに引き出した作曲家であったことが伺えます。 おっしゃる通り、ショパンとは“旧知の間柄”です。この作曲家のもっとも古い思い出を語 ることは、自分の幼少期を振り返ることを意味します。眼科医であった私の父は、優れた アマチュア・ピアニストでもありました。父は、シューマン、ブラームス、シャブリエ、ラフマ ニノフ、ムソルグスキーのほか、しばしばショパンの音楽を奏でていました。父が診療を 終えて戻ってくる夜の時間帯には、私はすでにベッドの中にいましたが、父が息抜きの ために弾くピアノの音が、しばしば聴こえてきました。父のレパートリーには、変イ長調の 「英雄」ポロネーズのほか、ワルツ、前奏曲、練習曲などが含まれていました。私は、ショ パンの音楽の美しさと力強さにすぐさま魅了されました。兄とともに、幾つかの楽曲のた めにストーリーをこしらえて遊んだこともあります。 やがて私は、ビルバオの音楽院でピアノを習い始めました。私が最初に学んだショパン の作品は、《タランテラ》——これも父が好んで弾いていた曲です——、《即興曲 第 1 番》で す。卒業試験の課題曲だった練習曲も、数曲、習得しました。 原注:«  Joaquín Achúcarro desde el piano  » ( Editorial Alpuerto S.A. )

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