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ゲイリー・ホフマン | ベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団 | クリスティアン・アルミンク 55 作曲年に目を向けると、ブロッホの《シェロモ》とエルガーの協奏曲のあいだには3年弱 の開きがあります。確かにいずれにも大戦の影響が認められますが、両曲の音楽世界は 乖離しているのではないでしょうか。 エルガーの協奏曲は極めて異例です。まず構造的には、作品全体のほぼ半分を第 4 楽章 が占めています。しかしこの曲を、ロマン派の代表的なチェロ協奏曲——例えばドヴォルザ ークの協奏曲——と比べてみると、表面的には似ているように見えながら、実際は様式、音 楽言語、楽曲に込められたメッセージの点で大きな相違があります。さらに当然それは、《 シェロモ》の叙述的で寓話的な様式ともかけ離れています。それでも私にとって、ブロッホと エルガーの作品のあいだを行き来するのは、さほど難しいことではありません。もちろん、レ コーディング・セッションで 2 曲を取り上げる場合には、問題はより複雑です。なぜなら 2 作の オーケストラ書法は、著しく異なるからです。《シェロモ》のオーケストラ・パートは交響詩を 彷彿させ、その大部分が力強く響きます。これとは対照的に、ソロ・パートはレチタティーヴ ォによって、長大なカデンツァを紡いでいきます。しばしば、独奏チェロがクレシェンド&ア ッチェレランドで歌い、続いてこれをオーケストラが“横取り”します。その瞬間に独奏チェロ は、どうあがいてもオーケストラの勢いに対抗できない状況に陥ります。それをよく心得てい たブロッホは、オーケストラ・パートだけに“響きの津波”を託すことで、他に類を見ない特異 なドラマを生み出しています。そして曲の終盤に、独奏チェロは暗たんとした詩情に包まれ ながら、秘めやかな表現に徹することになります。

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