LDV42
ゲイリー・ホフマン | ベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団 | クリスティアン・アルミンク 53 ゲイリー・ホフマンとの対話 まずは、2曲を組み合わせた理由をお聞かせください。 そもそものきっかけは第1次世界大戦末期をテーマとするプロジェクトでした。というのも、 ブロッホの《シェロモ》は第1次世界大戦中、そしてエルガーの《チェロ協奏曲》は大戦直後 に書かれた作品なのです。エルガーの白鳥の歌である《チェロ協奏曲》は、“昨日の世界” への告別にたとえられます。大戦がこの曲の語り口に重い影を落としていることは明らかで す。私には、《シェロモ》と《チェロ協奏曲》が感情的な次元で呼応し合っているように感じら れます。しかもこの2曲は、新規の組み合わせというわけではありません。すでにLPレコード の時代に、ピエール・フルニエとアルフレッド・ウォーレンスタインが2曲を同時収録している からです。《シェロモ》と《チェロ協奏曲》は全く異質な作品ですが、いずれも——ドビュッシー の《チェロ・ソナタ》と同様に——緊迫感と悲劇的な雰囲気を漂わせています。 レナード・ローズは《シェロモ》を2回レコーディングしています。おまけに、そのうちの1回 では貴方が現在所有している楽器が用いられています。 ローズは 1 度目のミトロプーロスとの録音では、まだゴフリラーを弾いています。そしてフィ ラデルフィアでのオーマンディとのステレオ録音では、仰る通り、このアマティを用いてい ます。つまり《シェロモ》には、私が現在弾いている楽器の刻印がすでに打たれているの です。ローズは、私の師ヤーノシュ・シュタルケルと同じく、オーケストラで首席チェリストを 務めていました。ソリストとして活躍する以前に一流オーケストラの首席奏者であった経歴 は、 2 人が協奏曲でソロを担う際の自由なアプローチと関係しているように思えます。
RkJQdWJsaXNoZXIy NjI2ODEz