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50 ブロッホ | エルガー 第1次世界大戦は、エドワード・エルガーの心と体を疲弊させ た。そして彼の霊感の源は、戦争にまつわる愛国的な作品を幾 つか生んだ後、枯渇してしまった。エルガーの妻アリスは、サセ ックス州フィトルワースに近いブリンクウェルズで、画家レック ス・ビカット・コールから愛らしい山荘を借りた。これを機にエ ルガーは、ようやく作曲を再開する。一気に書き上げられた室 内楽曲——《ヴァイオリン・ソナタ》《ピアノ五重奏曲》《弦楽四 重奏曲》——は、いずれも暗い抒情性を帯びている。この3作 は、1919年に完成したエルガーの絶筆《チェロ協奏曲》を予示 してもいる。当時エルガーは、62歳。すでに最愛の妻は肺がんと 診断されていた。エルガーは、かつての大成功作《ヴァイオリン 協奏曲》を振り返り、協奏曲の形式に再び向き合うことで、不幸 を追い払おうと望んだのだろうか?

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