LDV38.1
46 バッハ / 《平均律クラヴィーア曲集》全曲 第1巻は、演奏会で取り上げる場合も第2巻より易しいということでしょうか? その通りです。その主たる理由は、第 1 巻の方が短く、聴衆にとっても第 1 巻の方が理 解しやすいからです。演奏会で第 2 巻全曲を弾く場合には、集中力を極限状態まで 高める必要があります。バッハ自身は《平均律》が公の場で一挙に演奏されることは 全く想定していませんでした。 レコーディングで用いた楽器についてお話しください。 80 年代のスタインウェイD型です。アンドラーシュ・シフが定期的に録音で用いてい るピアノで、実に優れたカンタービレの効果を期待できます。楽器選びの際、私にと って音の持続は重要なポイントでした。ただし極めてピアノらしい楽器でしたので、 不均等律による調律をリクエストしました。等分平均律が用いられていなかったバッ ハの時代には、それぞれの調性が特異な性格を有していたからです。ただし、いわ ゆる“訓練された耳”をもつ人々には、ハ長調から遠く離れた調性において独特なう なりが聴こえます。
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