44 ドヴォルザーク | チェロ協奏曲 今回あなたは、音質と音色をめぐる考察に背中を押され、楽器を探すに至りました。アント ニオ·メネセスが所有していたマッテオ·ゴフリラーで録音することになった経緯をお話し いただけますか? ふだん私は、現代の楽器製作家フランク·ラヴァタンが手がけたチェロ[2020年製]を弾い ています。しかし今回のレコーディングでは、新たな響きの次元を探求し、“過去の声”にも触 れてみたいと思いました。さいわい「Canimex Inc.」社の寛大なご厚意に預かり、この1700 年から1710年にかけてヴェネツィアで製作された貴重な名器ゴフリラーを、数ヶ月間、貸 与していただくことができました。「Cello Invest」社と同社の代表アルバ·シェロー·オルーク 氏にご仲介いただき、私は2025年1月にこの楽器をカナダのケベックまで引き取りに行き ました。このチェロと出会ったとき、すぐさま恋に落ちました。私の演奏に、驚くほど即座に反 応してくれたのです。アントニオ·メネセス氏は、闘病のすえ2024年8月に逝去なさるまでの 約30年間、このチェロで名演を披露なさり、素晴らしいメンテナンスを施しました。このゴフ リラーは、たくさんの可能性を秘めた楽器で、限界を感じさせません。まるでフェラーリを運 転しているような感覚を私に抱かせる楽器です——それは途轍もなく、またとない感覚でし た。この楽器が、力強い演奏と繊細な演奏を同時に掘り下げるよう、私を後押ししてくれまし た。それぞれの弦の独特な音質のおかげで、類まれに豊かで丸みと深みのある音を生み出 すことができます。あわせて、20世紀初頭にラミー(息子)が製作した素晴らしい弓を用いま した。
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