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34 コン•エレガンツァ ソナタの愛称「心理状態(États d’âme)」は何に由来するのでしょうか? なおも極めてロマン主義的な《ソナタ第3番》は、4楽章構成の交響楽的なスケールをもつ 作品です。愛称「心理状態〔複数形〕」は、スクリャービンの二人目の妻タチヤナ・ド・シュリョ ーツェルによって、後から付けられたものです。私は長いあいだ、この愛称に惹かれていまし た。しかし最終的に、タチヤナが各楽章のために考案したタイトルは、そのナラティヴな性格 によって聴取を大いに複雑にしていると気づきました。以前の私は、「どのような心理状態? 」「どのような動き?」と自問し、言葉で言い表そうと試みていましたが、そのような関心事と は距離を置くに至りました。もちろん、今も私は《ソナタ第3番》を、内なる精神的な旅として 音楽的・主情的に体験し続けていますが、その旅を構成する様々な心理状態を、明確に言 語化することはありません。 私は、弾き手と聞き手それぞれの知覚——心理状態——は必ずしも一致しな いことに気づき、この曲のとらえどころのない移ろいを受け入れることにしたの です。

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