37 ジャン=フィリップ・コラール オルガンがもつ音色の可能性を前にして、もどかしさを抱くことはないのでしょうか? ありません。なぜなら、ブゾーニが練り上げた響きのスペクトル——それは大きな手を要求 するテクニックによって実現されます——は、私たちを別の世界へといざなうからです。そこ では素晴らしい効果が生まれます。幸運にも私の手は大きいのですが、全ての指が総動員 されることによって、まるで教会で弾いているような響きが生じます! 響きがもたらす悦楽 と感情——それは実に強烈です。ブゾーニは全てにおいて的確ですから、「オルガンで弾い たほうが良いのでは」と感じさせることは決してありません。彼は何も歪めていませんし、何 かを模倣しようともしていません。ブゾーニの編曲は私からすれば、徹頭徹尾、ピアノ音楽で す。それが私の心を動かします。彼の編曲がこれほどの次元に達しえたことは、驚くべきこと です。私は当初、やや二次的な何かに帰着すると覚悟していたのですが、結果として、その音 楽は完全にピアノに即していました。ブゾーニは、バッハの原曲の全体像を把握し、それらの 芯にあるアイデンティティと対峙しています。技術的にチャレンジングであることをのぞけば、 彼の編曲は、ひとりでに——しかも並はずれて素晴らしく——鳴り響きます。
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