LDV139

33 ジャン=フィリップ・コラール 《トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564》は、バッハの同種の作品の大半がそ うであるように[自筆譜は現存せず]幾つかの筆写譜しか残されていない。そのうちの一つ では、伝統的な2部作の中央に、アダージョ・セクションが挿入されている。華麗なトッカータ (レチタティーヴォのような出だしからシンフォニックな音楽へと移行する)と陽気なフーガ のあいだで、アダージョ・セクションが純然たる協奏曲様式のアリアを聞かせ、イタリア音楽 の影響を垣間見せる——結びのホモフォニックなエピソードは、暗く、複雑で、意表をつく。 しかしブゾーニは、オルガンの域を超えたところで、これらの傑作を手中に収め、 そこに自己を投影している。彼の天生の器楽的才能は、媒体(楽器)を超越して いる。彼は、ピアノ独自のモダンな手段を用いてバッハの音楽的メッセージの普 遍性を伝えるべく、ピアノからあらゆる潜在能力を引き出している。さらに彼は、 バッハの音楽的メッセージを新たな言語で表現することによって、その不変な深 みをいっそう強調することにもなった。ジャン=フィリップ・コラールの心を捉え たのも、まさにその点である。彼はそのような視点に立ちながら、自身が高みに位 置づけているバッハの芸術——自身が若い頃から慣れ親しんできたバッハの芸 術——に、ピアノを介してアプローチを試みた。

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