32 プラン·ジュ 45曲のコラールからなる未完の『オルガン小曲集』(大部分が1713年にヴァイマールで作 曲された)では、宗教的な側面に加えて、器楽演奏や作曲書法の面での教育的な関心がみ とめられる。そのうちの1曲《われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ BWV639》は、トリオ として——つまり3声(鍵盤2声とペダル1声)で——書かれている。同じくトリオとして書か れた《来たれ、異教徒の救い主よ BWV659》は、『18のライプツィヒ・コラール』の1曲であ る。ふんだんな装飾音をほどこされたソプラノ声部と、宗教的行列を想わせるバス・ライン は、バッハの最も静穏で感動的な祈りの音楽の一つを形づくっている。 上述の作品と同じく、前奏曲、トッカータ、フーガの厳密な作曲年は定かではない。それらは しかし、バッハが若かりし時代に書いたものと推測される。その筆頭である有名な《トッカー タとフーガ ニ短調 BWV565》に関しては、偽作説もある。この曲の絢爛たる活力には、北ド イツのオルガン・ヴィルトゥオーゾたち——とりわけバッハが1705年にリューベックへ旅し て実演に接した巨匠ディートリヒ・ブクステフーデ——からの影響がうかがえる。 もう一つの華麗で壮大な2部作《前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532》を支えているのも、コ ントラストの美である。3部構成の前奏曲では、トッカータ様式の2つのセクションのあいだ に、複雑で「アルカイックな」対位法書法のアッラ・ブレーヴェ・セクションが挟まれている。い っぽう、全137小節の長大なフーガは、リズミカルで遊び心に富んだモチーフを礎としてお り、このモチーフの動的な性格からヴィルトゥオジティが生成されていく。
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