フェルッチョ・ブゾーニは、ヨハン・セバスティアン・ バッハの作品の編曲に心血を注いだ。モーツァル ト、ブラームス、クルターク、ストコフスキーを筆頭 に、バッハの音楽を我先にと編曲した数多くの作曲 家たちのなかでも、ブゾーニは、その膨大な“編曲 量”ゆえに抜きん出た存在である。彼は、バッハの音 楽の更なる普及を目指したという点で、約半世紀前 の1851年に《オルガンのための6つの前奏曲とフ ーガ》[ピアノ独奏用編曲]を出版したフランツ・リス トの志を継いでいる。しかしながらブゾーニの試み は、(とりわけ出版の面での)スケールの大きさのみ ならず、ピアノという新たな媒体や新たな時代に即 した再創造によって——つまりはその近代性によっ て——、リストの試みとは一線を画する。
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