46 ウィーンの響き 今しがたモーツァルトの器楽曲の演劇性に言及なさいましたが、ウェーベルンについては いかがですか? 彼の《緩徐楽章》にも〔自伝的な〕恋人たちが登場しますし、詩的な筋立 てがあります。 ウェーベルンの書法は、その声楽性と“登場人物”たちの性格づけのプロセスにおいて、 モーツァルトの書法に通じています。しかし当然ながら、二人の音楽言語は全く異なりま す。1905年に書かれた、ウェーベルンの最初期の作品である《緩徐楽章》では、ロマン主義 的な表現が極限まで押し進められています。とはいえ奏者は、ほとばしる感情におぼれない よう注意しなければなりません。なぜなら、この音楽は大いなる慎みを滲ませているからで す。そのため、彼の語り口はモーツァルトの語り口よりも親密です。この曲で私たちは、オペラ の世界にいるのではなく、いわば打ち明け話の口調を求められています。ある男性が、愛する 人との散歩について私たちに語っています。この芽生えたばかりの愛は、独特な趣を湛えて います。それは、十二音技法への劇的な転換を前にした若い作曲家が描く、終焉間際の“調 性の時代”の趣に通じているのです。ブラームスやマーラーの記憶が、なおも私たちの耳のな かで響きます。
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