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エルメス四重奏団 43 モーツァルトのK.421が、彼のもっともドラマティックな作品の一つであることは確かで す。この曲は、出だしの数小節から私たちを不安や苦悩の世界へといざないます。ニ短調と いう主調は不吉な運命を暗示しています。奏者として、どのような心持ちでK.421にアプ ローチしていますか? K.421は「ハイドン·セット」の六つの四重奏曲のなかで唯一、短調で書かれている作品です。 モーツァルトは、この曲において自身の“仮面”を少し持ち上げ、不安を露わにしているように 思えます。この不安は、ほぼ全曲を通して私たちを取り巻きます。ヘ長調の第2楽章でさえ、 一筋の光を垣間見せるとはいえ、依然として常に苦悩を感じさせます。このアンダンテ楽章 は、完全に心を和らげてはくれないのです。音楽の流れは反復的で、問いかけているような 印象を与えます。モーツァルトの音楽において、安らぎは往々にして不安定で脆いものです。 ひょっとすると彼はK.421において、自らの実体験から得た人間的な感情を音で表現してい るのかもしれません。伝えられるところによると、彼は妻が第一子の出産を迎えた時期にこ の曲を書いたそうです。ですから私たちは、いわば母性的な温和さをもって第2楽章にアプ ローチすることで、楽章全体を貫く不安げな優しさを表現しようとしました。とはいえK.421 は完全に悲観的な音楽ではありません。踊り出したくなるような終楽章の最後の数小節は、 私たちを光り輝くニ長調へと導きます。

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