42 ウィーンの響き 三つの収録曲は、ロマン派時代の幕開けと終焉の息吹を体現することによって結びついて いるようにも思えます。じっさい、モーツァルトはK.421でロマン主義の到来を予告してい ます。ウェーベルンとコルンゴルトの作品はロマン主義に別れを告げているかのようです。 確かに3曲は、前ロマン派と後期ロマン派の特長をそなえており、何より、過去を見つめつつ 未来を見据えてもいます。モーツァルトは、K.421で尊敬するハイドンにオマージュを捧げる いっぽうで、秘められた親密な叙情性を湛えながら、どこか別の暗い世界へと目を向けてい るように思えます。しかも、この四重奏曲はソット·ヴォーチェ(ひそやかな声)で始まります。 ウェーベルンも《緩徐楽章》において、抑制された感情を表現し、無重力のような感覚を生 み出しています。私たちはこの曲のなかに、20世紀初頭のウィーンで最期を迎えつつあった ロマン主義の世界の脆さを感じ取ることができます。コルンゴルトの四重奏曲の作風は依然 として叙情的ではありますが、和声はかなり複雑で、時に響きの衝突さえ招いています。いず れにせよ本盤には、それぞれに強烈な感情を抱える3作品が収められています。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx