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35 民謡という先祖代々の遺産の保存を望んだヤナーチェクは、採集にとどまらず研究・分類に も携わり、多大な貢献を果たした。彼は、「エジソン蓄音機」を用いてのモラヴィアとスロヴァ キアの民謡の最初期の録音も幾度か統括した。 ヤナーチェクの民謡保存活動を支えたのが、モラヴィア出身の民謡採集の重鎮フランティシ ェク・バルトシュ(1837-1906)である。二人は共同で、モラヴィアの独唱用の伝統歌をまと めた『モラヴィア民謡の花束』を1890年に出版している。この歌集はすぐさま人気を呼び、数 ヶ月のうちに完売した。第2版は2年後に出版されている。多くの人びとが、これらの民謡をピ アノ伴奏で歌いたがったことから、ヤナーチェクは、はじめに15曲を選び、さらに38曲を選ん で、伴奏を付けた。これらはのちに『歌の中のモラヴィア民俗詩』(2巻組)として出版され、好 評を博すことになる。 イジー・カバートは、その全ての歌唱パートを器楽に移し替え、現代的なアレンジ を試みている。そこには、もはや歌詞は存在しない。それでもなお、音楽表現は私 たちに雄弁に語りかけてくる。これにかんして、ヤナーチェクが序文で綴った詩的 な説明は特筆に値する:「民俗音楽の演奏者たちは、長く引き伸ばされた旋律に おいて持続音を長々と奏でた後に、敏速で狭い音程を伴う旋律へと戻る。そこに は、風だけが管弦楽伴奏を担える旋律と歌がある……」 ターリヒ四重奏団

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