34 ラフマニノフ | 前奏曲 貴方は田舎の教会や鐘について述べておられます。ラフマニノフの音楽——特に前奏 曲——における教会や鐘の存在について、さらに詳しくお話しいただけますか? 青銅製の鐘はラフマニノフの音楽の至る所で響いています。作品3を皮切りに、様々な前奏 曲のあちこちでも登場します。ラフマニノフは幼い頃に祖母に連れられてノヴゴロドの聖ソ フィア大聖堂に通い、鐘の音を聞いていました。彼にとって、鐘は単に宗教的な要素である わけではありません。それは家族と結びついた風景の一部をなし、自然に溶け込み、自然と 切り離せない関係にあります。鐘は、ロシアの田園に唯一入り込んでいる人間的な要素であ り、麦の穂を揺らす風の音とともに、この風景が発する音なのです。鐘の音は、地平線と共鳴 します。ラフマニノフは、倍音をふんだんに含んだ鐘の音風景を、自身の音楽のなかで再現し ています。
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