32 ラフマニノフ | 前奏曲 ラフマニノフは、まず有名な作品3-2(嬰ハ短調)を作曲し、その後に作品23の10曲、そし て作品32の13曲を書き上げました。全部で24曲......! 象徴的な数字です。これらがの ちに、初版の版元によって一つの曲集にまとめられることになります。彼はショパンから影 響を受けたのでしょうか? 彼はショパンを深く敬愛していました。当時、ショパンとリストから影響を受けないことなど 不可能でした。作品23の直前に書かれたラフマニノフの《ショパンの主題[前奏曲第20番] による変奏曲作品22》は、ショパンへのオマージュです。しかしスクリャービンとは異なり、ラ フマニノフの書法は非常に早い段階でショパンの影響から解放されました。ラフマニノフの 作曲言語、そして霊感の源は、どこまでも独特です。彼の音楽にはスラヴの魂が染み込んで おり、そこに、自然、伝統音楽、ロシア正教会の古来の合唱音楽、鐘といった、数多くの要素 が取り込まれています。ショパンの音楽には、これらの要素がほとんど見出されませんし、絵 画や詩の示唆も見られません。 初めから一つの曲集として構想されたショパンの24曲の前奏曲は、不可分な関係にありま す。いっぽう、ラフマニノフの前奏曲は1曲1曲がより発展させられており、単独での演奏にも 向いていますし、各曲それぞれに個性があります。ただし、複数の前奏曲が自然にグループを 形成してもいます。作品23では、最初の4曲と最後の4曲が一つのまとまりを形作っており、 第5曲と第6曲が対をなしていますので、それぞれグループとして繋げて演奏することが可能 です。作品32にも似たような“グループ”が見出されます。本盤では、各グループのあいだの息 継ぎを意図的により長くすることで、それを示唆してみました。
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