30 夜想曲 ラヴェルとシマノフスキは幾度も会っていました。フォーレとシマノフスキも面識があった のでしょうか? エヴァ·ザヴァロ:2人の面会を裏付ける資料は一切見つけられませんでした。とはいえ彼ら は、当然、互いの評判を耳にしていたでしょうし、2人が歩んだ道がどこかで交差していても 不思議ではありません。1920年代にシマノフスキの名がパリで広まり始め、フランス音楽の 普及を目的に創設された独立音楽協会(初代総裁はフォーレ)も彼の作品をプログラミン グしていました。フォーレとシマノフスキは、いずれも特異な個性の持ち主ですが、2人には 共通点もあります。彼らは学生時代に、古い時代の様式や対位法の基礎を固めました。フォ ーレはニデルメイエール[古典·宗教]音楽学校で学び、シマノフスキはワルシャワ音楽院で ジグムント·ノスコフスキに師事したからです。のちに2人は、その影響とは距離を置いて独自 な様式を確立することになります——彼らが真摯に歩んだ道は、いずれも豊かな想像世界 と詩的世界に深く根を張っています。いっぽうで彼らは、古典的な形式と調性とに強い愛着 を抱き続けてもいました。2人の作品には、同一のインスピレーションに基づくテーマも見出 されます。さらに、彼らが最初期に出版した作品の大半は声楽曲ですし、2人とも、生涯にわ たり歌曲を手がけました。彼らの音楽表現は、“歌”に通ずる抒情性を強く感じさせます。
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