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48 永遠の四季 アメリカ音楽に特化した録音を幾つか手がけた貴方が、今回ロマン派のレパートリーに立 ち返ったのは、どのような心境の変化によるものですか? ヴァネッサ・ワーグナー:いわゆるミニマルな音楽は、近年の私の人生において極めて重要 な位置を占めています。とはいえ私は、並行して古典派やロマン派のレパートリーを弾き続 けてきました。とりわけグリーグの作品とは、長きにわたり関係を結んでいます。《抒情小曲 集》には子どもの頃から親しんでいますし、今も《ピアノ協奏曲》を演奏するたびに大きな喜 びを感じます。いっぽう私は、ミニマル・ミュージックの探求を通して、それまで自分が足を踏 み入れたことがなかった領域へと扉を開くことができました。そこに広がるミステリアスで内 向的な世界は、インプロヴィゼーション(即興)に没入しているような感覚や、自分の心の内 を旅しているような感覚を抱かせてくれます。そこでは、時空の変化が[通常のそれとは]異 なるのです。その経験を経て、私の演奏は——私が思うに——“養分”を得て豊かになりま した。何かを表現するさいに、よりいっそう時間をかけるようになり、“遅さ”を恐れないよう になりました。現在の私が何よりも関心を寄せているのは、ある種の親密性が物を言う音 楽です。

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