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62 ガブリエル・フォーレ | 夜想曲全集 フォーレのユーモラスで慎み深い人となりをしのばせますね。しかし彼は、自分の音楽 が——ドビュッシーのそれとは違って——何かを喚起してはいないと伝えようともしたの でしょう。 その点で、フォーレの絶対音楽はヨハン=セバスティアン・バッハのそれと似ていますね。バ ッハのポリフォニーのように、フォーレの音楽においても純粋に音だけが紡がれます。しか もフォーレの音楽は、明るい照明が射す大きな舞台には向いていません。「バッハBach」は ドイツ語で小川を意味しますが、フォーレの作品にも、バッハの作品と同じく、絶え間ない 流転、音楽的連続性があります。フォーレの音楽は、あまり休符を含んでいないにもかかわ らず、熱烈に沈黙を求めています! そして彼の音楽は、16分音符の“川の流れ”や、線的で 対位法的な手法など、水平的な発想のもとに創られています。その風変わりな和声は、しば しば複数の旋律線の偶発的な重なりから生じます。その瞬間、思いがけない色彩が突如現 れ、極めて特異なハーモニーが形成されるのです。

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