46 ひばり 貴方は今回、様々な音世界をオーバーラップさせることによって、それらのコントラストを 和らげようとしたの? それとも逆に、曲の並べ方によって、それらのコントラストを強調 したの? 私自身が何かを強調する必要はなかった。なぜならほとんどの曲には、すでに遅いテンポと 速いテンポのコントラストが内在しているから。これは、ルーマニア音楽の商標みたいなも のね。たとえばコンスタンティネスクの3作品《舞曲Joc》《歌Cântec》《ドブロジャ舞曲Joc dobrogean》を例にとると:第1曲は速くて、第2曲は遅くて、第3曲は途轍もなく速い。だか ら私がこの曲順で弾くだけで、おのずとコントラストが生まれる。 その一方、ルーマニア南部、モルダヴィア、トランシルヴァニアの民謡や舞曲を選ぶ過程で は、私たちの——ヒバリに次ぐ——2つ目の精神的特性のシンボルである「鐘」と向き合うこ とになった。鐘もルーマニアの伝統において重要な存在だし、とりわけ各地の修道院と切っ ても切れないものだから。ただし、2つのシンボルは同一の“揚力”で結ばれているから、私と しては、本盤に2つの別の筋道を設定するのではなく、2つを混ぜ合わせたかった。言うなれ ば、大地がもたらす心の糧——舞踊や民謡など——と、天がもたらす心の糧——その象徴 が鐘——の共生を表現するために……。だからこそ《ひばり》やバルトークの《ルーマニア舞 曲》が、エネスクの——どちらかと言えばより崇高な——〈草原の声〉や〈夜の鐘〉と肩を並 ベている。ディヌ・リパッティの《モルダヴィアの主題による夜想曲》は、史上初録音。この胸 がうずくような“主題”では、まるでキュビズムの肖像画のように諸要素が分裂している。
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