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45 ダナ・チョカルリエ そして今度は、貴方の番が回ってきたというわけね。エネスクにならって、本盤のために幾 つかの曲を縫い合わせ、貴方なりのパッチワークに仕上げたという意味で…… そんなふうに考えたことは一度もなかったけれど、確かにその通りね。作曲家や民族音楽学 者たち——あるいはバルトークやコンスタンティネスクのように作曲家と民族音楽学者を 兼ねた人たち——が集めたルーマニアの民俗音楽を縫い合わせて、ルーマニアの音の肖像 を描こうとしたわけだから。それは私にとって、宇宙人たちに送るメッセージを自分で決め、 ルーマニア製の音楽の花火を宇宙空間へ打ち上げようとしているような試みだった。 このプロジェクトの指揮を執った貴方は、エイリアンたちのためにこしらえたメドレーを宇 宙カプセルに詰める時、どんな見出しを添えたの? 陽気で楽観的なメッセージを送ろう としたのかしら? それとも、憂愁や憧憬を帯びたメッセージ? 両方のメッセージ。本盤を聞いていると、お祭り騒ぎをし、踊り、集い語らう人たちの姿が 目に浮かぶはず。本盤の楽しくて茶目っ気のある側面にいざなわれて、聞き手は踊り出した くてうずうずすると思うの。そこでは——たとえばコンスタンティネスクの曲や、エネスクの 《ルーマニア狂詩曲》においてさえも——沢山のユーモラスな瞬間が訪れる。でも一方で、 このアルバムからは憧憬も聞こえてくる。ルーマニア語で「dor」と呼ばれるこの郷愁は、「 ドイナdoïna」[ルーマニアの歌謡ジャンル]の中に見出される。コンスタンティネスクの《歌 Cântec》はゴルジュ地方のドイナで、聞いていると心が高揚し、同時に胸が締めつけられる。 この極めて感情的な側面は、[ルーマニア伝承の]バラッド「ミオリッツァMiorița」にも通じ る。このバラッドには、ルーマニアの3つの地方を象徴する3人の羊飼いが出てきて、読み手 には彼らの本心が分かるのだけど、3人のうち2人は、残りの1人を殺して彼の羊の群れを奪 おうと考えている……

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