42 ひばり りだけれど、じっさい、貴方も私もルクセンブルクとフランスで暮らしながら、今もなおルーマ ニア文化や家族の伝統にしっかりと根を下ろしている。私の父は学生時代にセミプロの団 体で民俗舞踊を踊っていた時、趣味の域を超える熱の入れようだったらしいの。それこそ、 私が自分の家族から——血や遺伝子によって——継承したものだと考えずにはいられな い。貴方が父親から言葉と文学への愛を受け継いだのと同じように……。 いずれにせよ私は、本盤『ひばりCiocârlia』のレコーディング中に、伝統音楽やルーマニア の音楽家たちの曲——あまり知られていないものも含めて——を奏でながら、使者になっ たような気分、ルーマニアから世界へ放たれる矢になったような気分だった。 本盤のプログラムを通して、貴方は“鳥の目”となって高みからルーマニアを俯瞰している。 そのなかでも、特に貴方が親近感を抱いている地域はどこ? バナット地方とトランシルヴァニア地方の音楽には、とりわけ深い愛着を抱いている。この2 つは両親の故郷だから、個人的に最もよく知っている土地だしね。ごく幼い頃に、父を介し てバナット地方の民俗音楽に出会い、母からはムレシュやマラムレシュの民俗音楽を教えて もらった。12歳前後の頃は数年連続で、クリスマスに母の出身村マダラシュとバヤマレを訪 れ、私自身がコリンダ[ルーマニアのクリスマス・キャロル]を歌ったこともある。ちなみに、本 盤に収めたバルトーク編曲の《ルーマニアのクリスマスの歌》の幾つかは、私が子供の頃に 歌っていたものなの。
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