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39 ダナ・チョカルリエ 親愛なるダナ。すぐに本題に入るけど……私たちは実のいとこで、幾つかの点で似たもの 同士。貴方は音楽家で、私は物書き、貴方はブカレストの生まれで、私はティミショアラの 生まれ、そして今、貴方はパリ、私はルクセンブルクで暮らしている。おまけに二人とも、 妙なことに鳥と縁がある。なぜなら、私たちが先祖から受け継いだ姓「Ciocârlie」——ほ とんどの人が正しく発音できない言葉——は、ルーマニア語で「ヒバリ」を意味するから。 私の場合、ルーマニアを離れて仏語圏に住み始めてすぐに、どうにかして、あの使い古さ れたフランス民謡を避けなければならないと悟ったの——自己紹介をした途端に、ある いは会話の流れで、皆が「可愛いヒバリさん、羽をむしっちゃうよgentille alouette, je te plumerai」と口ずさむのが御約束だったから。そこで私は、初めて上梓した仏語の本 を『ヒバリを捕らえる鏡 — ノマド的思想の小辞典Un miroir aux alouettes. Petit dictionnaire de la pensée nomade』と題してみた。その点、あなたは今日まで、この 姓の鉱脈を探る必要性も、“さえずりながら飛翔する鳥”の役割を自分なりに演じる必要性 も、特に感じてはいなかった様子。それが現実のものとなったのが、今回のアルバム『ひば りCiocârlia』ということかしら? Corina Mersch (Corina Ciocârlie) そう。自分の姓がルーマニアの象徴に他ならないと気づいて、本盤のアイデアが突然浮か んだの。私の歩みは「歌いながら空高く飛んでいく鳥」とそっくりだし、おそらく私自身にも、 ルーマニア音楽を“歌う”声、適性がそなわっていた。けれど今日に至るまで、この巡り合わ せ——あるいは運命のしるし——を活用したことは一度もなかったの。以前にもレコーディ ングを通してルーマニアの音の肖像を描こうとしたことはあったけれど、本盤のほうが断然、 野心的なプロジェクト。今回は、私たちルーマニア人のトーテムであるヒバリに、ドブロジャ 地方からトランシルヴァニア地方まで、国中を旅させてみたいと思ったの。ヒバリが各地方の 上空を飛びながら耳にするはずの音風景を、私なりに思い描いたというわけ。ヒバリは、多 彩な情景を喚起する音楽を私のために拾い集め、農村や都市の住人、芸術家など、様々な 人びとの肖像をスケッチして来てくれた……

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