LDV117
41 ダヴィド・グリマル | イタマール・ゴラン プーランクは、自身のヴァイオリン·ソナタについて“残念ながら私の傑作とはいえない”と 述べています。それについては、どう思われますか? ダヴィド・グリマル: プーランクのコメントは、彼の見せかけの謙虚さ、あるいは気取りに由 来するものでしょう。そうでなければ、単純に彼は間違っています。なぜなら彼は、他にもっ と駄作と呼べる作品を書いていますから!(笑) 私の持論では、このヴァイオリン・ソナタ は――プーランクが大きな“産みの苦しみ”を味わったことは確かですが――彼の最高傑作 の一つに数えられます。この曲は過小評価され、20世紀に生まれた数あるソナタのうち“2 軍”に分類されています。しかしこのソナタは、途轍もなく独創的で、特異で、荒々しく無骨で ある反面、極めて詩的でもあり、その書法は当時の音楽シーンに照らして、極めて想像力豊 かです。 プーランクは、管楽器のための作品を多く残しています。彼は管楽器の扱いには大いに慣 れていましたが、擦弦楽器を扱う作曲には苦労していたようです。もちろん、ヴァイオリン・ ソナタの創作にかんしては、大ヴァイオリン奏者ジネット・ヌヴーに助言を仰いだわけです が…… ダヴィド・グリマル: この激烈で、時にぎこちないソナタにおいて、プーランクはヴァイオリン に“親切”とはいえません。ヴァイオリンが自然に鳴っていない小節も幾つか見受けられます。 したがって、フランクやフォーレのヴァイオリン・ソナタと比べると、プーランクのそれは、“プ チブル的”な見地に立てば弾き心地のよい作品ではありません。私の考えでは、二つの楽器 が緊張関係にあり“せめぎ合う”プーランクのソナタは、どちらかと言うとベートーヴェンの《 クロイツェル》ソナタの系譜を継いでいます。私は最近、ヌヴーの録音の幾つかを再び聞い てみたのですが、彼の演奏がもつある種の実直さや誠実さは、プーランクのソナタにぴった りだと感じました。プーランクは、この曲の創作において自身に高い基準を課しました。結 果、彼は成功したのだと私は考えています。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx