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39 ダヴィド・グリマル | イタマール・ゴラン 本盤に収めた3作品の選曲理由をお話しください。 ダヴィド・グリマル: 多くの音楽家たちが一堂に会した20世紀パリの芸術的活気に迫りた いと思いました。私たちは、異質な世界がひしめき、出会い、混ざり合い、衝突した当時のパ リに魅せられました。そうこうするうちにロシアがウクライナへの侵攻を開始し、私たちは、そ の緊張の高まりをひしひしと感じることにもなりました。それゆえに今回、フランスとロシア とウクライナ――プロコフィエフはウクライナで生まれました――を結ぶプログラムに行き つきました。互いに反目し合っているわけではない一般市民たちの和解を、ささやかに願い ながら……。例のごとく、現在の侵攻は、オーケストラ団員たちの意志とは無関係に指揮者 の独断でなされた酷い演奏のようなものです。 イタマール・ゴラン: これらの作品が国境を超える普遍性をもつことを、想い起こす必要があ ります。いまウクライナで起きている戦争に限らず、私たちは非常に困難な時代を生きてい ます。音楽は、希望と再生、そしてあきらめずに前に進む意志を体現しています。 ダヴィド・グリマル: 私には、ロシア人アーティストたちを一からげに辱めることは常軌を逸 しているように思えます。もちろん、ロシア政府と距離を置くことができない一部の人びとへ の“制裁”は理解できますが……。私の師フィリップ·ヒルシュホルンはラトビアの生まれで、ソ ヴィエト連邦出身です(彼はソ連当局の圧政に大いに苦しみました。)私は彼の弟子として、 若干、ロシアのヴァイオリン演奏の伝統を受け継いでいます。現在の悲惨な状況に終止符 が打たれたとき、各国の市民たちが再び国境を越えて交流すると信じています。
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