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38 プーランク | ストラヴィンスキー | プロコフィエフ お二人の音楽的な関係については、どうお考えですか? ダヴィド・グリマル: ピアニストは、ヴァイオリンを支えながら二つの楽器の共生を実現する ために、しばしば“爪を隠す”必要があります。偉大なソロ·ピアニストたちの中には、お粗末 な伴奏をする人もいます。私は演奏会で、ピアノ界の大御所と何度か共演したことがありま すが、大量の汗を流したあげく、ピアノが発する大音量に押しつぶされました。モダン·ピアノ は、他の楽器とのリサイタルよりも、たとえばラフマニノフの協奏曲第3番の独奏に適してい ます。反対に、伴奏を活動の軸にしているピアニストの中にも、頑強さが足りない人はいま す。スケールの大きなヴァイオリン·ソナタの場合、ピアノ·パートは単なる伴奏の域を超えて いるというのに……。だからこそ、繊細さと技量を兼ねそなえているイタマールのような演奏 家は稀有です。彼は、他の楽器との対話のバランスを木目こまかく保ちながら、頑強な響き をピアノから引き出します。 イタマール・ゴラン: ダヴィドは、ブカレストでの公演の休憩中に私の楽屋に来て、ピアノの音 が強すぎないかと尋ねました。確かにその通りでした! ピアニストは、ヴァイオリニストの 音を“殺して”しまう危険とつねに隣り合わせなのです。しかも年を取るにつれて、若干、耳が 遠くなるので、自覚のないまま強く弾きすぎてしまう習性があります!(笑) しかし、注意す べきは音量だけではありません。二つの楽器が互いに補完し合うのが理想的です。ヴァイオ リンの音は、ピアノが差し出す“沃土”の上で花開かなければなりません。
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