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37 ダヴィド・グリマル | イタマール・ゴラン “ピアノ奏者イタマール・ゴラン”についてお話しください。 ダヴィド・グリマル: 私にとってイタマールは、類まれな音楽家であり、詩情あふれる素晴ら しい友人です。私も、彼とは深く通じ合うものがあると感じています。彼から豊富な霊感を得 ていますし、驚くほど息が合います。彼は、型にはまらない、インスピレーションと才能に恵ま れた演奏家で、つねに熱意をもって作品と向き合います。そして彼も述べているとおり、私た ちには人種という共通点もあります。彼はピアニストではありますが、マルク・シャガールが 描いたユダヤ人ヴァイオリニストたちを彷彿させます。どういうことかと言うと、イタマールの 中では東欧諸国の偉大なヴァイオリン奏者たちの伝統が息づいているのです。彼と一緒に 演奏すると、彼が何かを待ち望んでいることをひしひしと感じ、深い霊感を授けられます。彼 は、歌手たちを支え導く偉大な伴奏者たちに似ています。彼が差し出す“空飛ぶ絨毯(じゅう たん)”が私を運んでくれるのです。彼が私の演奏を隅々まで聞いてくれるおかげで、不思議 と私も上手に弾けるようになります! では次に“ヴァイオリン奏者ダヴィド·グリマル”について語っていただけますか? イタマール・ゴラン: ダヴィドこそ、類まれな音楽家です。彼が聞かせる極上の音色は、往年 の大ヴァイオリニストたちを――まるで身体の一部が彼らの生まれ変わりであるかのよう に――彷彿させます。ただしダヴィドは、彼らとは別の、よりモダンな側面も沢山そなえてい ます。彼は私に、言わば過去と現在と未来を連想させます。私たちは、まったく似ていませ ん。ダヴィドはどちらかと言えば理論的で、とても聡明ですが、私は“非理論的”で、どちらかと 言えば直感的です。もちろん、ダヴィドの直感は十分に冴えていますが……。彼の音楽性は、 往年の巨匠たちのそれのように、じつに自然です。彼とは時折り、ヨゼフ·スーク、ジネット·ヌ ヴー、ブロニスラフ·ギンペルら、私たちが深く敬愛する昔の名ヴァイオリニストたちの演奏 録音を一緒に聞いています。

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