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28 オペラ作曲家モーツァルト それらの作品を聞いたり聞き直したりする過程で、どのような知見が得られましたか? 先ほど挙げたオペラ作品において木管楽器とホルンが演じている重要な役割については、 どれほど強調してもし過ぎることはないでしょう。これらの楽器が用いられている作品全て において、モーツァルトはさらなる探究の機会を得ました――彼は、各楽器に特色を与え る手立てをより深く掘り下げ、これらの楽器と文字通り戯れ、未来の登場人物たちと結び つけています。その好例が、フィオルディリージとホルンの対話、スザンナや伯爵夫人のアリ アや《ドン・ジョヴァンニ》第1幕のアンサンブルに絡むフルートとオーボエ、幾つかのオペラ のフィナーレで声楽アンサンブルに哀愁を添えるクラリネット、タミーノを導くフルート、《ド ン・ジョヴァンニ》と《コジ》の管楽によるリトルネッロです。 この観点から見れば、協奏曲第22番K.482は――この曲は先に書かれた《ジュノム》協奏 曲の調性や型破りな要素を踏襲しています――いわば聞き手の記憶力を鍛えようとして いるのです。後にモーツァルトが手がける幾つかのオペラでは、このK.482と同一のフレー ズ、同一の音型、同一のリズム動機ないし旋律的動機が、より発展させられたかたちで用 いられており、登場人物やアクションや状況と結びつけられています。
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