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27 フィリップ·カサール 《イドメネオ》(1781)を手がけた後、1786年から1790年にかけて《フィガロの結婚》・《 ドン・ジョヴァンニ》・《コジ・ファン・トゥッテ》を完成させ、《魔笛》(1791)を書き上げるま での期間に、モーツァルトは自身の全作品において、アクションやリズム、身振りや動作、主 役と脇役、写実的な場面と静的な場面、限りなく多彩な表情と感情、照明や舞台セット、 ドラマとコメディ、滑稽さや急展開を意識しています。そうせずにはいられなかったのです。 本盤に収められている作品は全て《フィガロ》と同時期に書かれていますが…… モーツァルトは1785年12月(協奏曲第22番K.482)と1786年12月(演奏会用アリア《 どうしてあなたを忘れられようか》K.505)の間に、ほぼ全ジャンルの作品を手がけていま す。ご指摘のオペラ《フィガロ》はダ・ポンテ三部作の第1弾で、確かに1786年5月1日に初 演されました。しかし、考慮すべき同時期の作品は他にも沢山あります。ピアノ協奏曲第23 番(イ長調)・第24番(ハ短調)・第25番(ハ長調)、フリーメーソンのための二つの男声合 唱曲、ホルン協奏曲、ピアノ四重奏曲変ホ長調、ファゴットと二つのバセット・ホルンのため のアダージョ、二つのクラリネットと二つのバセット・ホルンとバス・クラリネットのためのア ダージョ、ピアノ三重奏曲、アンダンテと変奏曲ト長調、四手のためのピアノ・ソナタ、弦楽 四重奏曲第20番《ホフマイスター》K.499、ピアノとクラリネットとヴィオラのための三重 奏曲K.498……。私が本盤の準備中に初めて知った二つのバセット・ホルンのための12の 二重奏曲も、忘れてはなりません。
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