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53 ミシェル・ダルベルト 《超絶技巧練習曲集》から選んだのは、私が特に気に入っている4曲です。私は〈回想〉の中 に、プルーストを予示するような“失われた時の追求”を見ています。いっぽう〈マゼッパ〉は、 率直な感情表現に富んだ劇的な語りのように思えます。ヴィクトル·ユゴーがリストの献辞 を大いに歓迎したのには理由があるのです。ただしおそらく〈マゼッパ〉は、全12曲の中では 難曲の部類に入りません。少なくとも技術的な点で、恐ろしいほど演奏困難な〈鬼火〉とは ちがいます。曲集の最後を飾る〈雪あらし〉は、ドビュッシーの書法を先取りしていますが、 その前衛的な半音階書法によってマーラーの作風も彷彿させます。深い感銘を与える曲で すが、ある種の集中力を聞き手に求めるがゆえに、聞く側も骨が折れます。曲集の第3番に 当たる〈風景〉は……まったくもって練習曲的ではありません! 私は《超絶》を全曲演奏するさい、たいてい“意味深”に〈風景〉を最後に弾き ます。多くのヒロイズムとヴィルトゥオジティが去った後、静けさの中でリサイ タルを閉じるために……

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