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52 リスト / ワンス·アポン·ア·タイム 今回プログラミングなさった《超絶技巧練習曲集》の4曲と《オーベルマンの谷》は、何らか の共通のテーマで結ばれているのでしょうか？ 特に共通のテーマはありません。《オーベルマンの谷》を選曲したのは、『巡礼の年 第1年』 の中でもっとも優れた作品であると思えたからです。リストは、この15分の音楽の中に、彼 がのちに《ロ短調ソナタ》で発展させることになるあらゆる要素を凝縮させています。確かに ナラティヴな（物語性のある）作品ですが、リストが着想を得たセナンクールの小説『オーベ ルマン』とバイロンの長詩『チャイルド·ハロルドの巡礼』を読まないと手も足も出ない、とい うわけではありません。いずれにせよ、リストの世界に足を踏み入れる第一歩としては、《ロ 短調ソナタ》よりも《オーベルマンの谷》のほうが理想的です。リストの弟子たちによると、彼 はいつも“語っているような印象、物語を紡いでいるような印象を与えながら演奏するよう に”と述べていたそうです。私も自分の生徒たちには、しばしばそのように指導しています。