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39 ターリヒ四重奏団 ドヴォルザークは、弦楽四重奏曲第12番ヘ長調作品96《アメリカ》(B. 179)の作曲に着 手した時点で、すでに11曲の優れた弦楽四重奏曲を書き上げていたが、このジャンルに取 り組むのはおよそ13年ぶりだった。この間、彼は多くの知的難局を乗り切り、長期の演奏 旅行を数度行っている。彼はアメリカ滞在中の1893年に、ニューヨークの喧騒から逃れて 穏やかな休息をとるため、アイオワ州の小さな街スピルヴィルで幸福な数か月を過ごした。 この地で彼は、あらゆる要素が緻密に濃縮される深奥な表現形式――弦楽四重奏――と 再び向き合ったのである。同時期に書かれた有名な交響曲《新世界から》と同様に、弦楽 四重奏曲第12番にはドヴォルザークのアメリカでの“冒険”が反映されている。とりわけ彼 は、現地の伝統音楽や自然の音に真摯な関心を寄せた。彼は新大陸で得たさまざまな新 鮮な印象を作品の中で際立たせることによって、晩年間近の自身の音楽言語に特異な性 格を与えることになる。

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