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37 ターリヒ四重奏団 《ピアノのための8つのワルツ作品54》(音楽学者ヤルミル・ブルクハウゼルの整理番号 はB. 101)は、ジムロック社から2冊に分けて出版され、ピアノ四手のための《スラヴ舞曲 集》に匹敵する売り上げを記録した。《8つのワルツ》は、プラハの国営カジノからの委嘱 で、1879年11月から1880年1月にかけて作曲された。8曲は、30回目の開催となる同カジ ノの毎年恒例の舞踏会で用いられる予定だったが、あまり“踊りたくなるような”曲ではない と判断したドヴォルザークは、8曲をピアノ曲集に仕立てることにし、カジノの舞踏会のため に別途《プラハ・ワルツ集》を書いた。絢爛で華美なウィンナー・ワルツとは距離を置く《8つ のワルツ》は、いずれも簡明で自由闊達であり、“農村の匂いと宿屋の葡萄酒の香りを放っ て”いる。精彩に富んだ第1曲と第4曲はとりわけ人気を博し、ドヴォルザーク自身がすぐさ ま、この2曲を芸術家協会(Umelecka beseda)の音楽会のために弦楽四重奏版(1880 年、B.105)に編曲した。わざとらしさや無意味な超絶技巧とは無縁の2曲は、親密な雰囲 気に包まれており、その民俗的な躍動感は、チェコの精神を純粋に映し出している。 ごく最近の2020年に、チェコ出身のヴィオラ奏者イジー・カバート(パヴェル・ハース四重 奏団の元メンバー)が、残りの6曲のワルツを編曲した。どのワルツも独特な性格を有してい るが、誇り高く激情的な第3曲(ホ長調)と、ショパンのホ短調のマズルカ作品41-2を連想 させる哀愁を帯びた第7曲は、特筆に値する。

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