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38 ドビュッシー / 12の練習曲 ∙ 聖セバスティアンの殉教 すでにショパンの晩年の作品群の中に、新たな和声的地平の探求と、音色への 強烈な関心を聞き取ることができます。ドビュッシーは、ショパンがピアノ音楽 の作曲において抱いていた究極の理想を具現したといえるでしょうか? 私は個人的に、ショパンの晩年の作品群は、あらゆるピアノ作品の頂点に位置すると考え ています。そこでは彼自身が、すでに“究極の理想”を具現しています!1840年代の、つ まり最晩年のショパンが手がけた作品がもつ現代性――時代を数十年も先取りしていま す――には、ただただ驚かされます。その和声は大胆かつ独創的であり、斬新な響きが追 求され、共鳴と音色の問題が掘り下げられています。そして言うまでもなく、このアプローチ を受け継いだのがドビュッシーです。いうなれば彼は、このアプローチの責務をみずから負 い、前人未踏の極地まで発展させたのです。60歳差の2人の作曲家は、感動的なまでに 強い糸で結ばれています。ショパン――とりわけ晩年のショパン――への知識を深めること は、ドビュッシーのルーツを理解することにもなります。いっぽうでドビュッシーの作品は、シ ョパンの音楽の緻密さと豊かさを新たな光で照らしてくれます。
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