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フィリップ・ビアンコーニ 37 いっぽうドビュッシーの《練習曲集》の場合、教育的な課題が完全に達成されているとは思 えません――おそらくは〈3度音程のための〉を唯一の例外として。彼の練習曲を通じて、 奏者がじっさいに6度音程やオクターヴを弾く技術を向上させることになるという確信を、私 自身はもてません。たとえば〈和音のための〉を弾く難しさは、和音それ自体ではなく、ア クロバティックで絶えまないポジションの移動に起因しています。それがあまりに極端であ るため、しばしば表向きの“課題”がなおざりにされている印象さえ受けます。この《練習曲 集》は、ある高度な技法の習得を手助けすると見せかけながら、すでに奏者がそれを克服 していることを前提としているように感じられます。そして往々にして、曲の真の難しさは別 のところ――きわめて厄介なポジションや、敏捷さと柔軟性と反射神経を奏者に求める容 赦ない技法――に潜んでいるのです。当然ながら、指の巧みなコントロールと開かれた想 像力なしに、種々の音色や響きを重ね合わせ、限りなく多様なアタックや色彩を表現するこ となどできません。 要するにこの作品は、ピアニストのためというより作曲家のための練習曲集なのではない かと、私たちに自問させます。私には、基礎的な素材――たとえばシンプルな音程――を もとに楽曲を書き上げるよう、自分自身に挑戦を課しているドビュッシーの姿が想像できま す。じっさい彼は、4度の音程をもとに、自身の最高傑作のひとつを作曲しました。彼自身、 〈4度音程のための〉が“特異な響き”をもち、“いまだかつて聞かれたことのないもの”を聞 かせる曲であると出版者に語っています。確かに私たちは、この曲を支えている斬新な響 きの多様さと、徹底して自由な形式と、果てしのないイマジネーションに感嘆させられます。 驚くべき現代性と、魅惑的で不思議な詩情を具えた曲です。

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