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36 ドビュッシー / 12の練習曲 ∙ 聖セバスティアンの殉教 ドビュッシーは《練習曲集》を、誰よりも尊敬していたショパンに献呈しました。 この曲集はショパンの《練習曲集》と同じく、いわば技法上の“定型句”――3 度、4度、6度の音程など――を素材として書かれています。ピアニストであり、 即興の名手でもあった2人の天才作曲家のピアノ·テクニックの扱い方には、ど のような違いがあるとお考えですか? 当時ドビュッシーは、デュラン社のためにショパンの作品集の校訂を進めていました。かね てから崇拝していたショパンの音楽とじっくり向かい合ったドビュッシーが、想像力を掻きた てられたことは間違いありません。しかし私見を述べるなら、2人の練習曲へのアプローチ は大きく異なります。ショパンの場合、1曲ごとに設定した明確な課題(特定の音程、特殊な アルペッジョ、あるいはより複雑な技法上の“定型句”など)を、かなり厳密かつ一貫した手 法で扱っています。あまりに徹底的に課題が発展させられているため、奏者は耐久力を求 められ、時に疲労困憊させられます!幾つかの練習曲では、中間部のトリオのようなパッセ ージが、勢いよく流れゆく曲に“息継ぎ”をもたらします。彼の《練習曲集》は、高い音楽的 価値をもつ芸術作品である反面、優れた教則本でもあることを私たちに決して忘れさせま せん。ショパンの練習曲に取り組めば、技術を上達させ、無数の技法上の困難を克服する ことができます。そして彼の全作品の演奏に役立つテクニックや、何にでも耐えうる確固た る指を身につけることができます。

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