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37 ターリヒ弦楽四重奏団 それはチェコのクァルテットであるからだろうか ? ――当然そうだろう。しかし彼らの感情表現 やゆったりとした身振りは、常に私にウィーン系のクァルテットのサウンドを連想させた。彼ら の温かく明るい演奏は、バリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団まで遡らず とも、ヴェラー四重奏団のそれを思い起こさせたのである。こうした特徴は時とともにいっそう 強まっていった。一方で、スカンパやハースといった四重奏団が聴衆の心を掴んだ。そうし たチェコの若い世代の演奏は、ぶっきらぼうでドライで、ヴィルトゥオジックで素っ気ない風情 であった。 ターリヒ弦楽四重奏団は、明るさや優雅さ、そして柔和さといった特性を保ち続けた。ヤン・ ターリヒ・ジュニアを第 1 ヴァイオリンに迎えた後に若返ったとはいえ、全メンバーともチェコ国 外で学び、ドイツ/アメリカの偉大なクァルテットの傍らで自らの芸術を育んだ者たちである から、グループの伝統は継承された。それでもやはり、そこには「新生ターリヒ」の姿も認め られるだろう――彼らは、黄金色の神秘的な響き、流麗な音楽の運び、一音一音の軽やか さ、深みのある表現を手にしている。出自や流派が全ての指針でないことは百も承知である が、とはいえ、種々の流行を生き抜いたターリヒ弦楽四重奏団の空を舞う柔らかな音が、ド ヴォルザークを再び聴かせてくれるのは感慨深いことである。 これを回帰と呼ぶべきだろうか?いや、出発点だろう。ターリヒ弦 楽四重奏団が幾つかの質問に答え、その背景を明らかにしてくれ た。

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