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35 ウィレム・ラチュウミア そして、今回のCDの中で最も演奏時間が長いのが、フーゴー・ヴォルフの《「ワルキュー レ」によるパラフレーズ》ですね。この20分ほどの大曲を、貴方はどのようにご自分のもの にしたのでしょうか? W.L. : 冒頭から順を追って譜読みをしたわけではありません。最後の部分から始めて、 「魔の炎」に随分と時間をかけました。かなり綿密にアナリーゼをしながら、作品の流れに逆 行して曲をさらっていきました。この曲でも同様に、オーケストラからは少し距離を置き、“ピ アノ作品”の再現を目指しました。とてもぎこちない表現が散見する作品です。どの様な音 色を響かせ、どの声部を強調するか、という判断など、奏者は様々な選択を迫られます。あ まりに多くのことが楽譜に書かれているので、奏者はこの“言説”を再構築しながら、優先順 位を見極めねばならないのです。 この大曲の後にディスク全体を締めくくるのは、“簡潔の極み”、《エレジー 変イ長調》です ね。 W.L. : この選曲に二重の意味を託しています。《エレジー》は《トリスタンとイゾルデ》のため の草稿から生まれた作品ですから、言うまでもなくこの楽劇を示唆しているのですが、同時 に、ペソンの作品とも繋がっています。枝葉が完全にそぎ落とされた作風が、両曲に共通し ているという意味で。

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