LDV153.7
137 アンドレ・イゾワール イゾワールは、コラールの文学的・宗教的な内容に腰を据えて向き合い、常にそれを 最高の形で音楽に置き換えようとしてきた。彼が録音の収録曲目を作品番号順ではな く、特定の宗教的テーマや教会暦の順によって並べているのは、そうした熟慮によるも のである。 彼はそれぞれの作品(コラール、前奏曲とフーガ、協奏曲、ソナタなど)のために、フレ ージングやストップ、指使いに関するアイデア、純粋に独自の“何か”を考え付く。彼に とっては、テンポや音色、アーティキュレーションは互いに結びつくものだ。とりわけコ ンサートにおいて、彼は作品に大胆に装飾音を加える。これまでの演奏活動の中で、 彼は常に聴衆の関心の度合いを“触診”してきた――聴き手の注意が散漫になってい ると感じれば、即興で刺繍音を加えて作品の流れを活気づけ、聴衆の心を引いてみ せる!というのも、彼は普段は控えめに即興を行うものの、実は極めて高度な即興と作 曲の技術を持ち合わせている。しかし彼は、自分のために演奏するようなことは決して しない。彼にとって演奏は常に交流であり、分かち合いであるから。彼が何よりも忌嫌う のは、誰かを退屈させてしまうことなのだ! まさにその点に、彼が取り組んだ全曲録音の最も重要な特徴のひとつが結びつく。一 曲一曲が、歓喜あふれるポリフォニックな明瞭さを得て、溌剌とし、輝いている。その理 由はテンポ設定にのみあるわけではない。柔軟なフレージング、この上なく明瞭なタッ チ、イマジネーションあふれるストップといった要素もまた、そうした演奏を支えているの だ。
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