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133 アンドレ・イゾワール イゾワールは、非凡なテクニックと天賦の鍵盤演奏の才、そして並外れた手先の器用 さを惜しげもなく披露している。オルガン・コンソールに対する最良の姿勢を見出すべ く、彼は 18 世紀の演奏習慣への幅広い知識を身に付けている。絵画、とりわけ鍵盤楽 器に向かうバッハを描いた一連の絵画を注意深く観察し、ヨハン・ニコラウス・フォルケ ルが残した文書を研究する、といった具合に。フォルケルは大バッハの伝記を最初に 著した人物で、カール・フィリップ・エマニュエル・バッハを通じて、当時の演奏方法を 知る手がかりを明らかにしている。 そこから、イゾワールは一般的には用いられない一連の指使いを得るに至った――フ レージングにある種のアクセントを付けるための指使いだ。これによって、フルートやヴ ァイオリンなどの器楽や、言うまでもなく声楽の演奏表現に非常に近い“ディクション( 話し方)”が可能になる。イゾワールがオルガンを学ぶ以前に、故郷のサン=ディジエ でバスーンを吹いていたことを思い起こそう。鍵盤に向かう姿勢にまで至る、こうした徹 底した研究の全てが、イゾワールの演奏に、ある種の独特な音楽的パーソナリティを付 与している。さらにそれは、完全無欠のヴィルトゥオジティと結びつきながら、絢爛たる 音楽の流れを生み出してもいる。まさにこうした特徴ゆえに、イゾワールはデビュー当 時、国際的な栄誉(セント・アルバンスやハールレムのコンクールでの優勝など)の数 々を手にすることになったのだろう。

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