LDV153.7
125 アンドレ・イゾワール 音楽の道に進まれた経緯をお話しください。 音楽家を志したのは比較的、遅かったのです。15歳になるまでは歌詞のない音楽に は無関心で、人々がそうした音楽に興味を示すことが理解できませんでした。当時、生 地のサン=ディジエの吹奏楽団でトランペットを吹いていましたので、せいぜい“ト音 記号譜”は読めましたが・・・。ある日、聖歌隊の指揮を任されていた父が、歌い手たち の稽古のために地元の司祭から小型のハルモニウムを借りてきました。それが全ての きっかけで、この時 “ヘ音記号譜”を独学でマスターしたのです。 ピアノはお弾きにならなかったのですか? いいえ、最初の頃はもっぱらその小型のハルモニウムを弾いていました。結局、ソルフ ェージュの授業を受けたことは一度もありません。特にソルフェージュを必要としなかっ たのです。のちの時代にかなり真剣にピアノの勉強はしましたが、自分の楽器、と呼べ るまでには至っていません。 4 オクターヴ程度のオルガンでは、ピアノの基礎である跳 躍のテクニックは育まれません。この様にピアノとオルガンのテクニックは全く異なりま すが、補完し合っているとは思います。それでも、ピアノに一切取り組むことなしに、オ ルガンを完璧に演奏できるようになることは可能です。 「歌詞のない音楽が好きではなかった」と仰いましたが、当時はどのような音楽を聴 いていたのですか? シャンソンです。当時、「フランス・ミュジーク」や「ラジオ・クラシック」といったラジオ・チ ャンネルはありませんでしたから、「ラジオ・リュクサンブール(ルクセンブルク)」をひっ きりなしに聴いていました。そこでジャン・ヴィトルトの「聖トーマス教会のカンタータ」と いう番組に出会い、文字通り釘付けになってあの崇高な音楽に耳を傾けました・・・。実 は、この番組で初めてバッハの音楽に触れ、魅了されたのです。
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